大事例検討会へのお誘い
~3つの自殺企図事例から考える~ -
■開会の挨拶
羽藤 邦利 [メンタルケア協議会理事長]
■課題提示「精神病院から、今の課題を語る」
西脇 健三郎 西脇病院 理事長・院長
■事例検討① 孤立した統合失調症
- ●26歳時に電波が体に侵入するという体感幻覚と「死ね」という幻聴が出現。それまでは大手機械メーカーの技術者として働いていたが退職。1年間の入院の後、入退院を繰り返しながら両親、弟と同居してひきこもり生活。
- ●7年前糖尿病を発症。その頃よりイライラがひどくなり、暴力をふるうようになる。
- ●1年前、父親に暴力をふるって怪我を負わせ措置入院となり、3か月で退院。
退院時に両親と弟から引き取りを拒否され、世帯分離して一人暮らしになる。
- ●退院直後から孤立した生活。福祉事務所のケースワーカーや病院に頻回に電話をかけ、距離を置かれるようになる。病院のケースワーカーから通所施設、デイケア等を勧めても、本人は見学をしただけで利用を拒否。
糖尿病が悪化し、体調不良を訴え、将来への不安が大きくなる。
- ●4週間前、包丁で腹を切って自殺未遂し、措置入院となる。
3週間で退院になる。退院直後から病院へ頻回に電話をかけて入院したいと希望。病院は、依存的になるので入院は適応外と断る。
- ●本日、また包丁で腹を切り自ら警察に助けを求め、再度措置入院となる。
■事例検討② 虐待を受けて育った摂食障害・薬物乱用
- ●中学1年生の時に親が離婚し母子家庭となる。
- ●2年後に母親が再婚。その頃から不登校、摂食障害となる。当時、義父から暴力を日常的に受けていたらしい。
- ●高校進学するも、3年時に中退。キャバクラで働きはじめ、お店で知り合った男性と同棲。
- ●25歳の時、同棲相手が覚せい剤使用で逮捕。本人も薬物所持で検挙され、精神科病院で薬物依存の治療を受ける。
- ●退院後は近所の精神科クリニックに間欠的受診。キャバクラの仕事に戻るが、周囲と馴染めず、転々と店を変える。
- ●1年前(31歳)から男性と同棲していたが、次第に同棲相手から金銭の搾取や暴力を受けるようになる。半年前、本人の稼ぎが減ったことから男性が帰ってこなくなった。その後、過食嘔吐がひどくなり、眠れないから処方を増やしてくれと主治医に訴えていた。
- ●3日前、夜の海に入っていくところを通りかかりの人に助けられ、救急搬送される。体重28kg、多数のリストカットの痕、安定剤の過量服薬と多量の飲酒が認められた。
- ●本日、精神科転院が必要と思われるも受け入れ先が見つけられず、本人も拒否したため、通院先への紹介状を持たされて退院。家族とは連絡が取れず。
■事例検討③ 退職に追い込まれた発達障害
- ●小学から高校まで学業成績優秀だったが、こだわると引かなくてクラスメートと激しく対立したエピソードがあった。
- ●大学法学部を卒業し、大手企業の総合職に就職。一人暮らしで、友人はいない。両親や兄弟とも仲が良いとは言えず、滅多に実家へは帰らない。
- ●5年前、中間管理職に抜擢され新しい事業の責任者となるが、部下の管理がうまくいかないことをきっかけに、うつ状態となって休職を4回繰り返した。
- ●1年前にリワーク支援を利用して復職したが、すぐに部署内で部下と軋轢、取引先ともトラブル。再びうつ状態が強まり、欠勤がちになり、間もなく休職期間が上限に達したため退職となる。
- ●退職後、ハローワークや職業センターなどを利用して再就職を目指していたがうまくいかず、貯金が底をつき、家賃を滞納してマンションの立ち退きを迫られる。
- ●本日、ハローワークで生活保護を受けるように言われて福祉事務所に出向いたが、対応した職員の態度に腹を立てて帰ってしまう。
- ●夜になって、公園で首をつろうとしたが怖くなり、警察に駆け込んで自ら保護される。
■総合討論
論者
西脇 健三郎[医療法人志仁会 西脇病院 理事長・院長]
伊波 真理雄[千葉県精神科医療センター 医療法人社団ヒプノシス 雷門メンタルクリニック 院長]
原子 英樹[NPO法人多摩在宅支援センター円 訪問看護ステーション元 事業所長・TACTチーム所長]
徳山 尚子[東京都精神障害者家族会連合会(東京つくし会)理事]
羽藤 邦利[メンタルケア協議会理事長・代々木の森診療所理事長]
松本 俊彦 [座長]
西村 由紀 [座長]
指定発言
森川 すいめい [陽和病院地域支援室精神科医]
■閉会挨拶
西村 隆夫 [メンタルケア協議会理事・にしむらクリニック院長]
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