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6月22日のシンポジウムには700人余りの参加者がありました。精神障害者家族会の方も多数参加されていました。
イギリスでは、精神病を持つ人々への「家族支援」と「早期支援」が、急速に広まりつつあるようです。それによって、再発や再入院が減少し、就業率が向上し、将来への希望を失うことなく、地域で安定した社会生活を送れるようになっています。このシンポジウムで私達はたくさんの勇気と希望をもらいました。
英国の試みは、約30年前、1人の15歳の少女が精神病を発症し、治療が進まずに絶望的になっていたのを、家族支援を組み合わせた支援をしたことから始まりました。当時のイギリスはまだたくさんの精神科入院患者がいて「病院から地域へ」が課題となっており、ちょうど今の日本と似たような状況であったようです。発病早期の人に重点をおいた支援や、困っている家族への支援がありませんでした。
この少女は決して特殊なケースではないとの確信から、5人の精神科医と臨床心理士がIRISという小さな団体を作り、支援に取り組み工夫を重ね、活動の輪が拡がり、英国家族会RETHINKとも共同し、ガイドライン作り、ロビー活動を行い、大きなキャンペーンとなって行き、9年前に、イングランドの国家サービスとして採用されるまでに至ったのです。その5人のうちの一人がスミスさんです。
現在、スミスさんは英国精神保健研究所早期支援プログラム国家プロジェクト責任者ですが、週2日は病院で臨床心理士として家族支援・早期支援を実践しています。家族支援はほとんどがその人の家に出向いて行われ、ご家族が帰ってくる夜に行くことも多いそうです。家族が支援を必要とすれば、できるだけ早く、1週間以内には訪問ができるようになっているそうです。イングランドでは発病早期の人の殆どが、こうした支援を受けられるようになっています。発病してから3~5年以内の早期にこのような支援を受けることで、再発率、再入院率は下がり、就業率が上がり、多くの人が希望を持って社会生活を送れるようになっています。自殺率も劇的に低くなっています。さらに、このサービスの費用対効果は極めて高く、社会的費用の顕著な削減に繋がっていることも実証されています。
現在、イギリスでは、精神病以外の精神疾患にも家族支援・早期支援を受けられるようにすること、サービスの質を向上させること、発病の出来るだけ初期から関われるように早期発見に力を入れること、などが進められています。そのために15才の少年少女全員に学校で精神病についての教育が行われ、教師向けの訓練プログラムやツールの開発などが行われています。
日本でも、どの国でも「家族支援」「早期支援」は必要です。
日本で同じような「家族支援」「早期支援」をすぐに行うことは大変難しいように感じます。しかし、スミスさんに「現状を変えることをあきらめてはいけない。どんなに大きな改革も小さな運動から始まる。」ということを教えてもらいました。
皆様、スミスさんにもらったたくさんの勇気と希望を活動の原動力にして、これから頑張ってまいりませんか。メンタルケア協議会も、小さな組織ではありますが、精一杯、頑張ります。